大杉栄&伊藤野枝命日

 本日は、大杉栄伊藤野枝の命日、つまり1923(大正12)年9月16日甘粕正彦憲兵大尉らによって二人(と野枝の甥)が扼殺された事件、甘粕事件の起こった日である。この事件関連では、2011年1/10日付のブログ記事で触れ、2009年5/25日付でわがHPに記事を書いている。ネット上すでに消失しているHP記事については再録しておきたい。
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20110110/1294669891(「志と生活:2011年1/10 」)
◆5/24(日)は、3歳牝馬のクラシック・レース「オークス」が開催された。予想通りブエナビスタが、「桜花賞」で火花を散らしたレッドディザイアを再び差しきって勝利、3着には、「桜花賞」3着のジェルミナルが入着、同じ順位となった。この3連単馬券は2番人気で、こちらも押さえてあった。はじめ取り損ねていたかと勘違いしていたが、フォーメーション3連単馬券購入で、2着候補をディアジーナレッドディザイアとしていたことを失念していた。同時進行のJリーグ名古屋グランパスジュビロ磐田戦の趨勢が気になっていたためだ。グランパスは残念ながら敗れたが、「オークス」は的中できて幸い。このレースは「有馬記念」とともにわが的中率の高いG1レースなので、今年もまずまずの満足の結果であった。
 さて、ブエノビスタは、秋にフランス・ロンシャン競馬場で行われる「凱旋門賞」ヘ参戦するとのこと、快走を期待したい。フランスの「オークス」にあたるレース「プリ・ド・ディアーヌ」は、シャンティイ競馬場で催される。いまは亡き名エッセイスト虫明亜呂無の「オークスの思い出」(『女の足指と電話機』清流出版・所収)によれば、この競馬場は、「オークス」「ダービー」などの大きいレース以外はほとんど使用されないそうである。
……シャンティイ競馬場は、背景の城によって美観を誇っているが、その調教場は宏大な森に八方にひろがる八本の道を設け、障害練習コースをはじめ、さまざまな土質のコースを用意している。「ライトをてらせ」「鹿に注意」という標識版が森の各所にたてられていることからもわかるように、林間の道には陽の光がとどかず、昼なお暗い。森林の道を辿ってゆくと、初夏だというのに、落葉の湿ったにおいが欲情をそそるかのように肉感のなごりをつたえ、時として、樹間を走りぬける鹿の姿を見かけることがないでもない。……
 虫明亜呂無はこのエッセイでさらに、大正12年無政府主義者大杉栄とその妻伊藤野枝および野枝の甥を、軍上層部の意向を受けて惨殺した、憲兵大尉甘粕正彦が出獄後パリにわたっていて、ひたすら競馬場通いをしていたことを書いている。「うさをはらそうとしたが、むろん馬券はあたらず、金に窮して士官学校時代の在仏武官に無心することがしばしばだった」そうである。このこともあって、甘粕は、フランス人やフランス社会を呪ったらしい。フランス流の民主主義に憎悪を抱き、やがて満洲にわたってその地で黒幕となり、終戦の日に自決したのであった。エッセイはこう結んでいる。
……オークスが近づくと、フランスのオークスが思いだされ、フランスの競馬から、僕は甘粕大尉のことを思いだしたりする。それにしても、甘粕がもし馬券をとりまくり、パリの生活を享受していたら、日本の歴史もすこしはかわったかもしれないのではないだろうか。……
 なお今年はサトノダイヤモンド号挑戦の「凱旋門賞」レースが催されるロンシャン競馬場については、2011年8/21のブログ記事で書いている。
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20110821/1313897357(「フランスの競馬場:2011年8/21 」)

 大逆事件後のいわゆる「冬の時代」を扱った、宮本研作『美しきものの伝説』の舞台については以下。
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20101224/1293165294(「『美しきものの伝説』:2010年12/24 」)
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20110227/1298819466(「コンヴィチュニー演出の『サロメ』:2011年2/27 」)