祝・矢作厩舎「ダービー」制覇

 
 第79回「日本ダービー」は、矢作厩舎のディープブリランテ号がみごとに優勝。勝ちタイムも、2分23秒8というりっぱな時計。すでにグランプリボス号で「NHKマイルC」優勝でGⅠを獲っているが、「ダービー」となると別格、おめでとうございます。力はあっても折り合いの難しい馬をよくここまで仕込んだものである。さすが、矢作調教師! こちらは、馬券的には、3連複のもう一つの軸馬ゴールドシップがコケたため、フェノーメノトーセンホマレボシはむろん押えてあったものの、不的中の結果。今春福永騎手は乗れていないので、ワールドエース(1番人気)を軽視したのは正解でも、芦毛ゴールドシップの位置取りが悪すぎた。あれでは届かない。昨日は、虚脱状態。「ダービー」が終わったら、あとはAKB48の総選挙か。ほとんど知らない〈出馬表〉のなかから推しメン3連単を投票するとすれば、◎大島優子(B厩舎)◯峯岸みなみ(B厩舎)▲指原莉乃(さしこ:A厩舎)といったところか。
 http://www.akb48.co.jp/about/members/AKB48出馬表)
 2008年10月に、矢作厩舎を応援するSNSのコミュニティーのオフ会に出たときのことを思い出す。じつに楽しい夜を過ごした。わがHPの記事を再録し、あらためて快挙を慶びたい。
◆10/11(土)午後6時30分〜JRA矢作芳人厩舎」を応援するSNSコミュニティの第1回のオフ会が催された。こちらは、矢作芳人調教師(写真)の高校の先輩という縁で、管理人を引き受けている。幹事役は別の方で、会場は、折しも東京競馬4回第1週1日目が行なわれたばかりの東京府中の「涎屋」なる居酒屋。矢作調教師にも参加していただけ、まさに競馬ファンなら垂涎(すいぜん)の宴席と申せよう。
 入口が、まるで時代劇の盗賊一味が集まる店の潜り戸といった趣、すぐ近くで右往左往のご仁もあったようだ。しかし中へ入れば娑婆を忘れる歓楽の世界、満足できる雰囲気であった。水川あさみにちょい似のカワイイ店員さんに呼応した、才女会員のテキパキした配膳で、万事スムーズに運んだ。北海道の牧場からわざわざミス・シンザンに選ばれた女性も馳せ参じ、華やいだ会とはなった。
 何人か席についたところに、先導の幹事さんにつづいて矢作師ほかの方々も登場、盛り上がって、宴は一気に加速進行、競馬談義に花が咲いた。話題の中心は、むろん翌日の「毎日王冠」のこと。師は、「相手はウオッカ1頭でしょうよ。これまでのGⅠ・GⅡでの実績を考えてよ」との力強いお言葉。
 牧場でスーパーホーネットに稽古をつけていた、名古屋競馬場元ジョッキーのKさんも出席。12人ほどの参加数になった座はさらに活気づいた。〈どうやらスーパーホーネットは勝てそうだ〉と、確信のようなものがみなに浸透した。 (そして12日の「毎日王冠」では、みごとにスーパーホーネットが、まさにhornet=スズメバチのごとくゴール直前、断然一番人気で武豊騎乗のウオッカをとらえ勝利! 単複馬券でひさしぶりの馬券的中の喜びを味わった。)
    
 矢作調教師はご著書を出版される由、『開成調教師』という題名で、この24日に白夜書房から出るそうだ。矢作師が文筆にも才あることは知る人ぞ知るところである。 「読んでもらってぜひ先輩のご意見を下さい」と言われた。これは読まずばなるまい。
—運動会では、騎馬戦チーフでした。もしかするとこれが、ぼくの競馬の原点なんですよ。
—こちらは橙組のアーチ担当でした。1年あとの学年の橙組のアーチは、川上喜三郎といういま世界的な建築家がつくったそうです。
 同窓でないとわからない会話を交わして一瞬の懐古に浸った。
 深夜の2次会も用意されていたが途中退席して、21:30発新宿行準特急に飛び乗って帰宅。楽しい夜であった。(2008年10/13記)
JRA栗東矢作厩舎・矢作芳人調教師の『開成調教師』(白夜書房)が上梓された。スーパーホーネットが勝った「毎日王冠」前日に、この著作のことを、府中の居酒屋で矢作師から直接伺っていただけに、近くの「丸善」へただちに買いに走った。一気に読了。その内容については競馬ファンはむろん、関心のなかった者にも面白く、かつ大いに裨益されること間違いない。
 全5章から成り、第1章は、スーパーホーネットの「安田記念」出走にあたって、美浦滞在の決断のこと、第2章は、みずからの調教師への人生遍歴を「開成から調教師」と題して述べ、この書の中心といえる第3章は、「開成式厩舎経営術」とあるがそのジャーナリスティックな表題はともかく、この調教師の経営戦略および方針が、現実を踏まえかつ合理的でありながら人情を忘れないところなど、その生きてきた経歴と環境とは無関係ではないのだろう。第4章は、「馬の仕入れ」「馬の出し入れ」「番組選び」の調教師の仕事について、「穴を開ける」矢作厩舎の独特な方法と努力を述べ、最終第5章で、国際化を視野に入れた「未来への展望」を語っている。
 今回の「秋華賞」のブラックエンブレムのように、関東馬を施設条件の優れた栗東トレセンに滞在させるという戦術はあり得るところだが、関西馬をいくら輸送に弱いからということで、美浦に滞在させるというのは考えも思いつかないことだ。そこが象徴的で、「原点に大井がある」この調教師のほとんどを物語っている。
……矢作厩舎という一企業の経営者として、自らの企業のイメージアップを図るのは当然のことのはずだ。それなのにいまの競馬社会では、僕は変わり者呼ばわりされてしまう。僕が異端児でなくなったときこそ、日本の競馬社会が真に成熟したときだと思う。……
 馬の飼料・バンテージ・勝負服の運搬などすべてシステム化していることに感心するが、経営上の規模拡大を企図する戦略のなかでレースの選択を考えていることも注目したい。
……それと同時に「どこにどんな番組があるか」を把握していなくては、最も適切な番組を選ぶことはままならない。関西、関東、ローカルだけではなく、全国の地方交流競争までアンテナを広げておく必要がある。その上で、一銭でも多くぶんどるために、全国どこへでも出かけていく。まだ遠征したことはないが、場合によっては海外も選択肢に含まれてくるだろう。……
 矢作師は、若きころオーストラリアで厩務員修行をし、現在日本の調教師ではめずらしくフランス・ドーヴィルでの競走馬のセールに参加しているという。欧米の競馬関係者と通訳なしでわたりあえる語学力があるのも、矢作師の強みであろう。
 矢作厩舎のイメージカラーである「赤白」は、なんとサッカー好きの矢作師が、フランスのFCモナコのユニフォームに触発されて考案したものだそうだ。FCモナコは、たしかかつてアーセン・ベンゲルが指揮をとっていたクラブだ。名古屋グランパスサポーターとしては、いよいよ親しみが湧いてくるのである。(2008年10/25記)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110615/1308130711(「国際派・矢作芳人調教師」)
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家に咲く、上ダリア(半八重咲き)、下バラの花。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆