国際派・矢作芳人調教師

スポニチアネックス」6/15配信記事によれば、「14日(日本時間同日深夜)に英国アスコット競馬場で行われたG1セントジェームズパレスSに日本から挑戦したグランプリボス(牡3=矢作)は、ブービーの8着と敗れた。圧倒的1番人気に支持された昨年の欧州最優秀2歳牡馬フランケルが直線早めに抜け出し優勝」とのことである。矢作師は、同馬の精神面に敗因があったかもしれないとし、力をつけて「またこの場所に戻ってきます」と語ったとある。さすが国際派の矢作芳人調教師らしい視野と野望である。「NHKマイルC」で負かしたリアルインパクト(3着)が、6月の「安田記念」を勝っていることからも、グランプリボス号の今後の活躍に大いに期待できるし愉しみである。昨年の『競馬ブック』掲載インタビューについてのHPの記載を、再録したい。

◆『競馬ブック』(ケイバブック刊)1/24号に、矢作芳人調教師へのインタビュー記事(聞き手:芦谷有香)が掲載されている。矢作師は、昨年「関西リーディングトップ」に輝いて、その管理馬がG1初制覇を含めて本年いよいよ期待される調教師である。すでに著書『開成調教師』(白夜書房)で、知っていることと重なるところもあったが、考えさせる発言が多かった。アジアでの日本企業の沈没が懸念されるなか、(矢作師は意図していないだろうが)いろいろな立場で学べる提言となっている。
 父君は、大井競馬の調教師であったから、まさに良血の血筋で、オーストラリアで修行をしてから、05年に関西で厩舎を開業、5年目にして勝ち鞍「トップ」の偉業を成し遂げたのだ。驚きだ!
 父君から「若いうちに英語を身につけろ」とアドバイスされ留学を決めたそうであるから、このグローバル化の時代を先取りしていたことになる。だからいま矢作師は、頻繁に海外のセリや牧場を見に行っている。その活動の視野と舞台が広く、狭くJRAの中だけで展望していない。その眼は、遠く管理馬の「凱旋門賞」勝利を見据えているのだろう。
 調教を「甘く」し、実戦で鍛える方法で馬を疲れさせないよう努めていること、私費を投入して馬の治療機械を導入していること、飼料も燕麦飼料と独自なブレンド飼料を使っていること、馬房にクーラーを入れずミストを付けて馬の住空間を保持することなど、そしてスタッフも定年退職まで辞めた人がいないなど、人と馬にやさしい厩舎経営のありかたを知らされる。
 むろん競馬の勝負はビジネスであるから、勝つための合理的な戦略はみごとである。「よく稼ぎ、よく遊べ」の厩舎のコンセプトは、ロマンティストにしてリアリストである矢作芳人そのひとの生き方を示している。これに同感である。(2010年1/25記)
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のガクアジサイ(墨田の花火)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆